皆さんこんにちは!
鷲頭牧場、更新担当の中西です。
本日は第7回牧場雑学講座!
今回は、歴史についてです。
日本における食用牛の育成は、現在の「和牛ブランド」として世界的に評価されています。しかし、その歴史を振り返ると、日本人が牛肉を食べるようになったのは比較的最近のことであり、もともとは農耕や運搬のために牛が飼育されていました。
1. 日本における牛の飼育の起源
① 古代(弥生時代~奈良時代):牛は農耕用・祭祀用
牛が日本に伝来したのは、弥生時代(紀元前300年~300年頃)とされ、主に農耕や運搬のために飼育されていました。
✅ 牛の伝来
- 朝鮮半島を経由して日本へ。
- 弥生時代の遺跡から牛の骨が発見されており、農耕用として使われた可能性が高い。
✅ 奈良時代(8世紀)
- 仏教の影響で、肉食が禁止される。
- この頃の牛は「使役牛」として、農作業や荷物の運搬が中心。
- 牛乳を飲む習慣は一部の貴族の間であったが、一般には広まらなかった。
2. 中世~江戸時代:牛肉禁止と隠れた食文化
① 中世(平安時代~戦国時代):牛肉の食文化が制限される
✅ 仏教の影響と肉食禁止令(675年)
- 天武天皇が「殺生を避けるために肉食禁止令」を発布。
- 以降、江戸時代までの長い間、牛肉を食べる習慣は表立って広まらなかった。
✅ 一方で密かに続いた牛肉食
- 西日本の一部地域(近江、但馬、播磨など)では「薬食い」として牛肉を食べる風習が残る。
- 滋賀県近江地方では、病気の治療や滋養強壮のために牛肉を食べる「養生食」として扱われていた。
② 江戸時代(1603年~1868年):隠れた牛肉文化と和牛のルーツ
江戸時代になると、各地で在来種の牛(後の和牛のルーツ)が農耕用に発展し、日本独自の牛の品種が生まれました。
✅ 江戸時代の牛の特徴
- 「但馬牛」「近江牛」「土佐赤牛」など、各地で異なる牛の品種が発展。
- ほとんどの牛は農耕や荷役用で、食用としての認識は低かった。
✅ 「すき焼き」文化の萌芽
- 近江(現在の滋賀県)では、僧侶や医者が牛肉を食べる習慣があった。
- 「味噌漬け牛肉」などの調理法が考案され、後のすき焼き文化につながる。
3. 明治時代~戦後:食用牛の本格的な発展
① 明治時代(1868年~1912年):食肉文化の解禁
✅ 明治政府の「肉食推奨政策」
- 1872年、明治天皇が牛肉を食べたことが話題となり、日本国内で「肉食文化」が拡大。
- 西洋文化の影響を受け、牛肉が「栄養価の高い食品」として注目される。
- 東京・大阪に牛鍋(すき焼き)の専門店が登場し、大衆にも広がる。
✅ 食用牛の品種改良の開始
- 明治政府は、海外の牛(欧米のショートホーンやブラウンスイス)を導入し、在来種と交配。
- この時期に、但馬牛や近江牛などが改良され、現代の和牛の基礎が確立。
② 戦後~高度経済成長期(1945年~1970年):和牛ブランドの確立
✅ 戦後の食肉需要の増加
- 戦後の復興とともに、食肉消費量が急増し、牛肉の生産が本格化。
- 1950年代以降、アメリカの影響でステーキ文化が広がる。
✅ 「和牛」のブランド化
- 1960年代:但馬牛をベースにした「神戸牛」「松阪牛」などのブランド和牛が誕生。
- 1970年代:霜降り肉(サシ)の技術が発展し、「柔らかくて甘い和牛」が高級ブランドとして確立。
4. 現代の食用牛産業と課題
① 日本の食用牛の品種
現在、日本で食用として育成される牛は、大きく分けて以下の3種類。
✅ 和牛(国産黒毛和種)
- 「神戸牛」「松阪牛」「飛騨牛」など、最高級ブランド牛肉として扱われる。
- 肉質が柔らかく、霜降りが豊富で甘みが強い。
✅ 交雑種(和牛×乳牛)
- 育成コストを抑えつつ、一定の品質を確保。
- スーパーなどで流通する一般的な国産牛肉。
✅ ホルスタイン種(乳牛)
- 乳牛として飼育された後、一部が食用肉となる。
- 赤身が多く、脂肪分が少ないのが特徴。
② 現代の課題
✅ 生産コストの上昇
- 飼料の高騰や人件費の増加により、和牛の価格が高騰。
- 海外産牛肉との価格競争が激化。
✅ 輸出市場の拡大
- 和牛は海外での人気が高まり、特にアメリカ・中国・シンガポールなどで需要が増加。
- 高品質な和牛の安定供給が求められる。
✅ 持続可能な畜産への移行
- 環境負荷を抑えるための「低炭素畜産」や「放牧型畜産」の導入が進む。
5. まとめ
✅ 古代~江戸時代:牛は農耕用で、食用としては限られていた。
✅ 明治時代~戦後:肉食文化が定着し、和牛の品種改良が進む。
✅ 高度経済成長期~現代:ブランド和牛が確立し、輸出市場が拡大。
✅ 今後の課題:持続可能な畜産と価格競争への対応。
日本の食用牛の育成は、長い歴史の中で進化し、「和牛ブランド」という世界に誇る食文化を築き上げました。今後も、環境問題や国際競争の中で、持続可能な形での発展が求められています。
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